公判で警察がNシステムの記録を利用
栃木女児殺害事件の公判で、検察は現場を指揮した警察官を証人として出廷させ、異例とも言える「Nシステム(自動車ナンバー自動読取装置)」の記録に関して証言した。
そもそも「Nシステム」とは、設置場所を通過した車両のナンバーを赤外線で自動に読み取る装置の名称で「N」とも呼ばれている。
警察庁が1986年に導入され、2015年5月末現在で全国に1690台が設置されているというが、設置場所などに関して明確にすると今後の捜査に支障をきたす可能性があるため、一般公開はされていない。
また、機能は機種によって異なるが、一般的にはナンバー以外にも運転者や同乗者などを撮影することも可能で、日本全国を移動しているすべての車両を対象として追跡できる。
デメリットとしては、「Nシステム」の設置場所は高速道路や幹線道路などに多く見受けられるが、全国にあるすべて道路を網羅していないという点だろう。
仮に、対象車両が「Nシステム」の設置場所を把握している場合、避けて通過されてしまうと記録にはまったく残らないのだ。
しかし、警察は事件の容疑者が車両で逃走した時の追跡、盗難車両の監視、人命に関わる行方不明者の捜索時などに利用しているシステムなので日本警察の独自捜査網と言っても過言ではない。
2016年3月1日 産経ニュース
秘密扱いの「Nシステム」記録 公判での利用は異例
平成17年12月、栃木県今市市(現日光市)の小学1年Yちゃん=当時(7)=が殺害された事件で、殺人罪に問われている、栃木県鹿沼市、無職、K被告(33)の裁判員裁判第2回公判が1日、宇都宮地裁(松原里美裁判長)であり、現場を指揮した警察官が検察側証人として出廷、自動車ナンバー自動読み取り装置(Nシステム)の記録に関して証言した。通常、秘密扱いにされているNシステムの記録が公判で利用されるのは異例だ。
証言した警察官は、Nシステムについて「機械に照会すれば設置場所を通過した車のナンバーや日時、進行方向が分かる」とした上で「秘匿性が高く、設置場所の情報が公になれば犯罪者に悪用されると聞いている」と説明した。
検察側は、Nシステムの照会結果を示した資料6枚を提示し、事件で犠牲となったYちゃん=当時(7)=が失踪した翌日の17年12月2日、K被告の車が宇都宮市内の3カ所のNシステムに記録されていたと指摘。同市鐺山町(こてやままち)の国道123号では、午前2時20分に東へ向かい、同6時12分には西に向かって走行していたと、K被告が、自宅方面から遺体遺棄現場方面を往復していたことを示す客観的事実の1つとした。
これに対し、弁護側はNシステムの機能や設置場所について警察官に質問。「Nシステムで記録された地点を車が通過したことは分かっても、その車がどこから来てどこに向かったかは分かりませんよね」と問うと、警察官は「分かりません」と答えた。
Nシステムは、警察庁が昭和61年度から導入し、全国に1690台(昨年5月現在)設置されている。高速道路や主要道にあり、赤外線で通過車両のナンバーを記録できる。捜査関係者によると、警察は容疑者の取り調べの際にも直接記録を示さない運用を徹底し、検察側も「記録の証拠化を警察に求めていない」とされている。
「Nシステム」の記録は警察の捜査情報であるため、公にされない。
今回の公判でも、「Nシステム」の記録は公にされておらず、現場を指揮した警察官の証言のみに留まっている。
また、警察は容疑者の取り調べの際にも直接記録を示さないことを徹底しており、検察側も「記録の証拠化を警察に求めていない」としていることから、今後も「Nシステム」の記録が公にされることはなさそうだ。
行方不明者の捜索とNシステム
通常の行方不明者の失踪届が各警察署に提出されても、事件になっていない場合は自らの意志で失踪したと判断され、「Nシステム」が使用されることはない。
例外としては、「人命」が関わる事案であれば、100%という確率ではないが使用される可能性もあるのだ。
もう少し詳しく説明すると、失踪した人物が自殺をほのめかす遺書などを残していた場合、事件に巻き込まれた可能性がある場合などだ。
通常、警察とはどのような事案に関しても、事件とならなければ動くことはできない。
しかし、「人命」というものが関わる場合、担当した捜査関係者などの判断で「Nシステム」の記録を警察は確認することもある。
では、事件とならない行方不明者の捜索をしたい時にはどうすればよいのか?
現時点では、探偵事務所・興信所に行方調査の依頼をする方法しかないのだ。