“復讐代行業者”名乗り女性脅す男を逮捕
2017年5月、千葉県匝瑳市の病院職員O容疑者はインターネット上で知った実在するという”復讐代行業者”の名前で千葉県市川市に居住する知人の女性(当時29歳)に手紙を送付し、脅した疑いで千葉県警行徳警察署に逮捕されるという事件が発生した。
警察によると、O容疑者が送付した手紙には「あなたに対しての復讐依頼を当社が請け負いました」などと書かれた手紙を被害女性に送付したという。
また、O容疑者は被害女性へ数回に渡り嫌がらせをしていたとの情報もあり、今後詳しく捜査するようだ。
2017年7月22日 テレ朝News
“復讐代行”名乗り女性脅す「憎しみがこみあげて」
いわゆる「復讐(ふくしゅう)代行業者」を名乗って知人の女性に手紙を送り脅迫したとして、27歳の男が逮捕されました。
千葉県匝瑳市の病院職員・O容疑者は5月、復讐代行業者を名乗り千葉県市川市に住む知人の女性(当時29)に「あなたに対しての復讐依頼を当社が請け負いました」などと書かれた手紙を送り、脅した疑いが持たれています。警察によりますと、O容疑者はインターネットで知った復讐代行業者の名前を使っていたということです。調べに対し、O容疑者は「憎しみが込み上げて嫌がらせのつもりで手紙を送った」と容疑を認めています。O容疑者は、この女性に対してほかにも数回、嫌がらせをしていたとみられ、警察が詳しく調べています。
”復讐代行業者”を名乗る男とストーカー加害者
病院職員O容疑者はなぜ、実在すると推察される”復讐代行業者”を名乗って、「あなたに対しての復讐依頼を当社が請け負いました」などと書いた手紙を送ったのだろうか。
O容疑者は「憎しみがこみあげて嫌がらせのつもりで送った」と供述しているように、「とにかく被害女性を怖がらせたい」「被害女性が脅えて悩む姿を見たい」などの、憎しみ・怨みという感情のみを優先させており、大人として後先は考えていない行動だったと判断される。
なりすました”復讐代行業者”の手紙を郵送するまでに、O容疑者は社会人として日々の仕事や生活をしながら、手紙の文面を考え、書面に書き、封筒に入れ、切手を出して郵送するという、嫌がらせの典型とも言える安易な思いつきでの行動力があるのにも関わらず、残念ながらその「嫌がらせの手紙」が被害女性のもとに届いたあとの結末までは考えられなかったようだ。
ストーカー行為をするような加害者なども同様なのだが、比較的に自己中心的な考えになってしまうことが多いように思う。
被害者に対する一方的な怨みや辛みなどが膨らみ、自分の思うようにいかないという怒りの感情は抑えられず、人として絶対に外れてはいけない道しるべとなる「倫理的」な要素と、人としての規準を指し示す「道徳的」な要素が欠けてしまうのだろう。
また、すべての加害者が当てはまるということは無いが、このような暴挙に出る加害者の特徴としては社交性がなく、個人の閉鎖的な環境下で生活しており、家族・友達・勤務先などで「なんでも相談できる人」「叱ってくれる人」が存在しないか、極端に少ないということも多いのだ。
これも、現実とは離れたインターネット・ゲーム・SNSなどのバーチャル空間に依存するという生活スタイルで、他人との直接的な交流を避ける傾向にあるインドアな現代社会人の特徴なのかもしれない。
ストーカー行為や復讐・報復などの仕返し行為などを一方的な感情や思い込みのみで実行する者などが、今後もっと増加していく可能性もあるので注意は必要だろう。
人が人として物事の善悪を考え、正しく行動していくためには「なんでも相談できる人」「叱ってくれる人」は必要不可欠なのだろう。
本気で考えてくれるそんな人さえいれば、途中で軌道修正し、思い止まることもできたはずなのだが・・・。
”復讐代行業者”が実在するという現実
まず1番に知って欲しいのは、”復讐代行”なんて調査項目は法律的に考えても認められていないが、もちろん探偵業者でも認められていないので探偵業者と”復讐代行業者”は別として考えていただきたい。
現在、生活ツールとなり誰もが気軽に利用しているインターネットの世界では、金銭を支払えば何でもしてくれる「なんでも屋」のような特殊サイトがいくつも存在する。
その中の1つに挙げられるのは、犯罪行為にまで至ったケースが定期的にニュースで取り上げられる今回の男が名乗った”復讐代行業者”や”闇サイト”だろう。
インターネットは無法地帯のようなもので、誰でも”復讐代行”などと検索すれば、いくつもの関連サイトが表示されてしまう。
刀を持った武士が活躍していた日本では古くから、「敵討(かたきうち)」や「仇討ち(あだうち)」という名の復讐を行う習わしがあった。
江戸時代に入ると警察権の範囲として制度化され、時代劇のような「子が親の仇を討つ」というものや、「血縁関係がある親族のために行う復讐」などをを指したという。
しかし、「敵討」や「仇討ち」は憲法が制定された現代社会では認められていない行為なのだが、”復讐代行”という名の「敵討」「仇討ち」「復讐」「報復」などを連想させるサイトがインターネット上に存在してしまうという矛盾もあるのだ。
江戸時代などの武士が刀を持っていた頃は、私Bも大好きな必殺仕事人のような報酬をもらって「仇討ち」することを生業とする代行業者が存在していても不思議ではないのだが、現代社会で必殺仕事人のような「あなたの怨み晴らします」的な”復讐代行業”は即アウトとなるなるのは誰でもご理解いただけるだろう。
どちらも怖い”復讐代行業者”と”偽復讐代行業者”
ここでは”復讐代行”でも、”復讐代行業者”と”偽復讐代行業者”が存在するというお話をしたいと思う。
どちらの”復讐代行業者”が良い悪いの話ではなく、どちらも法律的にアウトなので誤解しないで欲しい。
通常、このような”復讐代行業者”に依頼する人は「自分の手は汚したくない」「自分がやったと気付かれたくない」と考るだろう。
しかし、”復讐代行業者”も”偽復讐代行業者”も依頼者からすれば、人には言えない内容を依頼するという状況になるので、依頼内容を逆手に利用されて「恐喝される」なんてケースもありえるのではないだろうか。
そして一番怖いのが、どこの誰かも分からない人物を信用して”復讐”などという人には言えないような行為を依頼してしまうということだ。
大抵、犯罪に利用されているような”闇サイト”や”復讐代行業者サイト”などに、番地まで記載された住所や電話番号などは表記されていない。
ファーストコンタクトともいえる連絡方法のほとんどが、名義の必要がないYahoo!メールやGmailなどを代表とするフリーメールアドレスが使用されており、その後に電話連絡があったとしても非通知または、番号が表記されていても他人名義の携帯電話である可能性は非常に高い。
そして料金の支払いをする口座ももちろん他人名義だろうし、口座を使用せずに現金をレターパックで私書箱に郵送なんてこともあるだろう。
また、代表者をはじめとし、実行する社員なども警戒している場合が多く、依頼者とは一切会わないということも考えられる。
依頼者にさえ姿を見せず、業務上でも他人名義などを多用するという業務体系などから、振り込め詐欺と同様と考えてもいいのではないだろうか。
ここまでは”復讐代行業者”と”偽復讐代行業者”は同様なのだが、ここからが少し違うのだ。
依頼者から高額な報酬をもらって嫌がらせ行為などを請け負い、遂行するのが”復讐代行業者”なのだが、高額な報酬だけをもらって何も実行せずに、やったふりをする詐欺行為が”偽復讐代行業者”となる。
ようは”復讐”を「実行するか・実行しないか」だけの違いなのだが、依頼者が高額を支払うという現実は変わらないのだ。
過去に”復讐代行業者”が起こした事件
下記は全国で初めて”復讐代行業者”が逮捕された事件だ。
この事件では、”復讐代行業者”が中国のサーバーを経由して送信元を匿名化するソフトを使って勤務先へメールを送信するという行動を起こしたため、名誉毀損容疑で逮捕された。
また、依頼者となる元社員女も中傷する封書を勤務先などに郵送したとして同様の容疑で逮捕されている。
2013年10月23日 毎日新聞
復讐代行サイト:運営者を名誉毀損容疑で逮捕 全国初
「復讐(ふくしゅう)」の依頼を受けて女性に中傷メールを送信したとして、広島県警サイバー犯罪対策課などは23日、復讐代行サイトを運営する中国籍のO容疑者(31)=東京都葛飾区奥戸6=を名誉毀損(きそん)容疑で逮捕した。同容疑者は容疑を否認している。県警によると、ネット上で「復讐屋」と言われる業者を摘発するのは全国で初めて。
逮捕容疑は、広島県三次市の女(29)と共謀。今年3月1日から19日までに十数回にわたり、同市の建築関係会社のホームページに、女性従業員(25)を中傷する内容のメールを送ったとしている。
県警によると、会社を辞めた女が女性に一方的に恨みを募らせ、インターネットで見つけたO容疑者のサイトに復讐を依頼。O容疑者は中国のサーバーを経由して送信元を匿名化するソフトを使い、「(女性が)前の会社で金銭を盗んだ」「社長や専務と愛人関係にある」などとうその内容のメールを会社のホームページにあったアドレス数カ所に送ったという。 報酬は30万~40万円だった。
女は今年9月、女性を中傷する封書を会社などに郵送したとして県警三次署に名誉毀損容疑で逮捕され、罰金30万円の略式命令を受けた。
下記は探偵業者が”偽復讐代行業者”となり逮捕された事件だ。
この事件では、殺害依頼を受けて”偽復讐代行業者”となった自称探偵業者が、暴力行為等処罰法違反(集団犯罪等の請託)の容疑で逮捕された。
また、依頼者となる東京消防庁元救急隊員も同様の容疑で逮捕されている。
2005年9月14日 読売新聞
消防救急隊員の女、不倫相手の妻殺害をネットで依頼
インターネットの“殺人請け負いサイト”を通じて不倫相手の妻の殺害を依頼したとして、警視庁捜査1課は14日、東京消防庁渋谷消防署救急隊員・K容疑者(32)(東京都多摩市)を暴力行為等処罰法違反(集団犯罪等の請託)の容疑で逮捕。殺害依頼を受けた自称探偵業・T容疑者(40)(国立市)も同法違反容疑で逮捕した。不倫相手の妻は無事という。
調べによると、K容疑者は昨年11月、「殺人」や「復讐(ふくしゅう)」を請け負うとうたっているサイトに掲載されたT容疑者の電話番号に連絡し、不倫相手の妻(32)を殺害するよう依頼、今年1月24日ごろ、「調査費用」名目で田部容疑者に現金100万円を支払った疑い。T容疑者は、殺害依頼に応じて現金を受け取った疑い。
T容疑者は1月中旬、K容疑者と立川市内で落ち合った際、「バイクに二人乗りし、トンネルで追い越し際に(不倫相手の妻に)細菌スプレーを散布する」などと具体的な殺害計画を持ち掛けていたという。K容疑者はT容疑者に、「尾行代」「薬品購入代」などの名目で約10回にわたり計約1500万円を渡していた。
K容疑者は独身で、調べに対し、「不倫相手の奥さんに子供ができ、裏切られた気持ちになったので(殺害を)依頼した」などと容疑を認めている。T容疑者も事実関係は認めているという。
殺害計画が実行されないことを不審に思ったK容疑者が7月上旬、多摩中央署に「だまされているかも」と相談に訪れ、事件が発覚した。
探偵業者が”偽復讐代行業者”に変貌しているので本当に嫌な気分になる事件なのだが、上記2つの事件を比べることで”復讐代行業者”と”偽復讐代行業者”の違いをご理解いただけたのではないだろうか。
嫌がらせ被害に遭った女性のためにも、今後このような類似犯罪が二度と起こらないためにも、”復讐代行業者”を厳罰化する法律の制定を切に願うばかりである。