夫の浮気相手に不貞行為認められず
東京・銀座にあるクラブのママが、客である会社社長の男性と約7年間にわたり、繰り返し性的関係にあったため、訴訟となった。
「探偵」として、ここまではめずらしい話ではないのだが、結末が衝撃的だった。
男性の妻は、ママに対して「精神的苦痛を受けた」ことによる慰謝料400万円を求めたのだが、東京地裁は「売春と同様、商売として性交渉をしたに過ぎず、結婚生活の平和を害さない」と判断し、妻の慰謝料請求を退ける判決を出したのだ。
この判決を簡単にお伝えすると、裁判所がママの行為を仕事柄あり得る「典型的な枕営業」とし、妻の慰謝料請求を退けたというものだ。
また、裁判所は枕営業を「優良顧客を確保するために要求に応じて性交渉をする営業活動」と発言、「枕営業をする者が少なからずいることは公知の事実だ」とも認めている。
そして、妻に対してはママの枕営業があったからといって「何ら結婚生活の平和を害するものでなく、妻が不快に感じても不法行為にはならない」としたのだ。
2005~12年の7年間、月に1・2回のペースで主に土曜日に会い、昼食を済ませてからホテルへ行っては夕方には別れるという行動を繰り返した夫とママの関係は、ママの「枕営業」という結果になってしまった。
裁判所はその他にも、「客が店に通って代金を支払う中から、間接的に枕営業の対価が支払われている」と発言し、枕営業と売春は「対価の支払いが、直接か間接かの違いに過ぎない」とも言っている。
2015年5月28日 朝日新聞
銀座のクラブママが夫に「枕営業」 妻の賠償請求を棄却
客を確保するために性交渉したクラブのママの「枕営業」は、客の妻に対する不法行為となるのか。こうした点について、東京地裁が「売春と同様、商売として性交渉をしたに過ぎず、結婚生活の平和を害さない」と判断し、妻の賠償請求を退ける判決を出していたことがわかった。
判決は昨年4月に出された。裁判では、東京・銀座のクラブのママである女性が客の会社社長の男性と約7年間、繰り返し性交渉したとして、男性の妻が「精神的苦痛を受けた」と女性に慰謝料400万円を求めた。
判決で始関(しせき)正光裁判官は売春を例に挙げ、売春婦が対価を得て妻のある客と性交渉しても、客の求めに商売として応じたにすぎないと指摘。「何ら結婚生活の平和を害するものでなく、妻が不快に感じても不法行為にはならない」とした。
そのうえで、枕営業は「優良顧客を確保するために要求に応じて性交渉をする営業活動」とし、「枕営業をする者が少なからずいることは公知の事実だ」と指摘。「客が店に通って代金を支払う中から、間接的に枕営業の対価が支払われている」として、枕営業と売春は「対価の支払いが、直接か間接かの違いに過ぎない」とした。
判決によると、男性と女性は2005~12年、月に1、2回のペースで主に土曜日に、昼食をとった後、ホテルに行って夕方に別れることを繰り返した。この間、男性は同じ頻度で店に通っていたため、始関裁判官は「典型的な枕営業」と認定し、妻の請求を退けた。妻は控訴せず、判決が確定した。
妻の代理人の青島克行弁護士によると、裁判で妻側は「不倫だ」と訴え、女性側は性交渉の事実を否定した。「双方とも主張していない枕営業の論点を裁判官が一方的に持ち出して判決を書いた。訴訟も当事者の意見を聞かず、わずか2回で打ち切られた。依頼者の意向で控訴しなかったが、不当な判決だ」と述べた。
100歩譲ってこの行為が枕営業だとしても、それを裁判所が公に認めてしまうのはどうなのだろう。
夜の業界で「枕営業」などをせずに、プライドを持って働いている女性も多いはずなのだが、はたしてどう思うのだろうか?
この判決では、クラブやキャバクラなどに勤務する女性は全員、「客が支払う代金から、間接的に枕営業の対価をもらっている」と言っていることになるのだが・・・。
今回のようなケースだと、ママが男性を妻帯者と知っているにも関わらず、肉体関係を持てば、2人は妻への賠償責任を負うのが一般的なのだ。
しかし、夫の不貞行為をママの「枕営業」とされ、慰謝料請求を認められなかった妻。
ママが夫との性的関係を認めていないにも関わらず、「枕営業は公知の事実」と認め、ママの行為は「何ら結婚生活の平和を害するものでない」とした裁判所。
今回の「矛盾」が多い裁判所の判決は、これから定着するような「前例」になるとは思えないのだが、今後の進展が非常に気になる裁判である。