警察庁がSNSもストーカー対応を指示
2016年5月21日午後5時過ぎ、東京都小金井市のイベント会場でストーカーによる凄惨な事件が起こった経緯から、警察庁は全国の警察に対し、多様化するストーカー事件の被害者と加害者の関係などを想定し、判断が難しい場合でも広くストーカー被害と捉え、警察本部の専門部署に速報するように指示したという。
2016年6月20日 NHKニュースより引用
「SNSでストーカー多様化」警察庁が対応指示
先月、東京・小金井市で芸能活動をしていた女子大学生がファンの男に刺された事件を受けて、警察庁は、SNSの広がりによってストーカーの被害者と加害者の関係が多様化していることなどを想定し的確に対応するよう、全国の警察に指示しました。
先月、東京・小金井市で芸能活動をしていた大学3年生のTさん(20)がナイフで刺され、ファンの男が逮捕された事件では、Tさんがツイッターなどに執ように書き込みをされていることを警察署に相談していましたが、ストーカー被害の相談として扱わず、警視庁本部にあるストーカー対策の専門部署には連絡していませんでした。
この対応の検証を進めている警視庁が先週、対応に問題があったことを明らかにしたことを受け、警察庁は、判断が難しい場合でも広くストーカー被害と捉え、警察本部の専門部署に速報するよう、全国の警察に指示しました。
そのうえで、SNSの広がりなどによって被害者と加害者の関係が多様化し「元交際相手」以外にも、今回のような一方的な憧れによる「著名人と一般人」のほか、「学校や職場での関係」、それに「SNSでのやり取りのみの関係」など、さまざまなケースがあることから、事態が急展開するおそれがあることを想定して的確に対応するよう求めました。
現行のストーカー規制法の欠点
この事件では、「ストーカー規制法」の抜け穴とも言うべき欠点が明らかになってしまった。
そもそも現行の「ストーカー規制法」では、特定の個人に対して送信される「メール」「電話」「ファックス」をストーカー行為の対象としているのだが、LINEやTwitterなどのSNSへの悪意ある書き込みであっても不特定多数への発信とみなされ、個人の意思でブロックができるという見解でストーカー行為の適用外となってしまう。
しかし、「ストーカー規制法」という法律に従って対応した警視庁でも、この事件でSNSへの書き込みをストーカー行為の対象としなかったことなどに対し、対応に問題があったと明らかにしているのだ。
1999年に起こった埼玉県桶川市のストーカー事件がきっかけとなり施行された「ストーカー規制法」。
2012年に神奈川県逗子市で起こったストーカー事件がきっかけとなり、2013年に一部改正されているのだが、この時点で不特定多数への発信をするSNSは規制対象外となっている。
「ストーカー規制法」の改正時にもSNSを含めるか否かは検討されているようだが、残念な結果となっており、SNSを含めないことは当初から問題視されていた。
そもそもこの改正時に、SNSも「ストーカー規制法」の対象にしていれば、今回の事件で警視庁もストーカー事案として対応できたので、このような事件は発生しなかった可能性は高い。
今回の警察庁の対応は新たな「ストーカー規制法」への序章とも言うべきものなのだとも言える。
また、多様化する「ストーカー行為」やSNSなどの「ネットストーカー」に苦しむ被害者達にとっては非常に喜ぶべき点なのだが、もっと早い時期に対応できたのではと思えてならない。
SNSをストーカー規制法の対象へ
2013年に改正された「ストーカー規制法」の盲点を補う目的で「迷惑防止条例」を改正している都道府県などもあるほどだ。
下記の記事「東京都小金井市でストーカーによる事件が発生」でも書いているのだが、例えばラブ探偵事務所が所在している千葉県では、LINEやTwitterなどで個人へ執拗なメッセージを送ったり、インターネット上で人を誹謗中傷するなどの行為を「迷惑防止条例」に追加し、ストーカー行為として対応している。
また、このような条例は、群馬県・静岡県・京都府などの複数の都道府県でも導入されているのだ。
具体的に千葉県の「迷惑防止条例」で「ストーカー」の規制対象となっている点としては次の9つの項目がある。
- つきまとい・待ち伏せ・立ちふさがり・見張り・押し掛け
- 監視等により行動を把握していることを告げる行為
- 面会などの義務のないことの要求
- 虚偽の事項を告げる行為
- 乱暴な言動
- 無言電話
- 連続電話・連続ファクシミリ・電子メール等の連続送信
- 汚物などの送付
- 名誉を害する事項を告げる行為
早期に再改正するべき「ストーカー規制法」
現行の「ストーカー規制法」ではメール・電話・ファックスなどとは同一とされないSNS。
確かに悪意あるメッセージなどは個人の意思でブロックできるのだが、SNSなどを多用する「ネットストーカー」はブロックだけでは阻止できないのは間違いないだろう。
SNSをブロックされたストーカーは、「ストーカー行為」を止めるどころか日に日にエスカレートしていき、場合によってはその他のさらなる重大事件に発展する可能性なども危惧される。
「ストーカー規制法」の規制対象を拡大し、複雑な人間関係と多様化するSNSなどのインターネット媒体に対応していかなければ、真の「ストーカー規制法」にはならない。
今後、警察はストーカー被害などの専門窓口などをどこまで拡大できるのか?
そして多様化するストーカー被害に対し、「ストーカー規制法」に従ってどれだけ早期に介入してストーカー行為を行っている人物に抑止をかけることができるのかが課題となるだろう。
今までのような、人が傷ついてから法律が施行されたり、改正される「ストーカー規制法」ではなく、人が傷つく前に改正される「ストーカー規制法」であって欲しいと切に願っている。